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心に寄り添う歌と声、女子の共感を生み出すMs.OOJAはどのように作られたのか

昨年(2017年)、DREAMS COME TRUEのリスペクト・カバーアルバム『Ms.OOJAの、いちばん泣けるドリカム』をリリースし、「歌うことの意味を考える節目になった」というMs.OOJA。ドリカムのDNAを授かり、Ms.OOJAが作り上げた6枚目のアルバム『PROUD』は、人生と戦う女子たちがドキッとする楽曲が満載。なぜ、彼女の歌は女性の共感を生むのか、自身の人生をひも解きながら、歌に対する想いを訊いた。

ほんのちょっと見方を変えると、物事ってぜんぜん違う姿を見せてくれます。このアルバムが、そういう気付きのヒントになるとうれしい。

――まずは、Ms.OOJAはどのように作られたのかを知っていきたいと思います。歌手を目指すきっかけは何だったのでしょう。

子どものころから、歌うのは大好きでした。カラオケに行って、友だちに「上手いね!」って褒められてから、なんとなく歌手になりたい気持ちが芽生えた感じです。

――その気持ちが確固たるものになったのはいつですか。

高校3年の時ですね。歌手になりたい気持ちが強くなって、友だちのやっているダンスイベントで歌ってみたその時に、自分の目の前がパッと開ける感覚があったんです。その時、“私は歌手として生きていく”って確信して、そこからは歌手になることだけを考えるようになりました。

――わー、神の啓示のような感じですね。それから具体的にどうしたのですか。

クラブで歌い始めました。オーディションを受けたりっていうことはしていなかったけど、週末にクラブに行って歌わせてもらったり。“いつか歌手になれる”って漠然と考えていただけでしたね(笑)。

――クラブということは、歌っていたのはR&Bですか?

そうですね。実はそれまであまり洋楽って聴いたことがなかったんですけど、メアリー・J. ブライジを聴いて“あー、こんなカッコいい音楽があるんだ!”って衝撃を受けたのがきっかけ。そこからヒップホップとかR&Bがどんどん好きになって、そういう音がかかるクラブに出るようになったんです。当時はレコードのインストを使って、その上に自分でメロディと歌詞を乗せて歌っていました。

――デビューのきっかけになったのは?

22、23歳ごろから、ラッパーとユニットを組んでインディーズで活動をするようになって、27歳くらいでソロアルバムをインディーズからリリースしました。でも30歳を目前に、焦りを感じるようになっていたんです。“メジャーデビューはできないかもしれないけれど、なんとか歌を歌っていくためにはどうしたらいいか”って考えて、“資格でも取ろうかな”なんて思ったり(笑)。ずっと“歌手になる”って漠然と思っていただけだったけど、“私は今、インディーズというフィールドにいるけれど、ここで一番になる!”って具体的な目標を持つことにしたんです。気持を切り替えたら、チャンスが訪れました。

――考え方を変えた時に、流れが変わったということですね。

はい。名古屋のクラブでいろいろなアーティストが出るイベントに参加したのですが、それを見に来ていた現在のレコード会社のスタッフに声をかけられたんです。そこからどんどん話が進んで、メジャーデビューにこぎつけました。

――ちょうど隣に、その時のスタッフの方がいます(笑)。そのときのことを教えてください。

(レコード会社スタッフ)僕たちは、AK69を見に行ってたのですが、上司とお酒を飲みながら出番を待っていたら、長身で佇まいが神々しい女性シンガーが出てきて(笑)。その声と姿に魅了されました。

――で、名刺を渡された、と(笑)。

朝方5時に、ヘロヘロのおじさん2人が(笑)。ウサンくさい感じもしたんですけれど、大人が調子いいこと言うのを当てにしないって思っていた時期なので、さほど本気にしてなかったんです(笑)。でも、驚くべき早さでデビューが決まってしまって。

――不思議ですね、メジャーデビューへの欲望を捨ててシフトチェンジした時ですよね。

そうですね。それまではシンデレラストーリーとか、急なラッキーがいつかあるんじゃないかって思っていたんです。でも、そんなものはないって悟った瞬間に、自分がちゃんとしなきゃって思った。そこに気付いたタイミングだったんです。人生ってそんなものかもしれないですね。人に頼ったり、ラッキーパンチを待っててもダメだって身に沁みました。

――歌手になるという夢をあきらめそうになったことはなかったですか?

クラブで一緒に歌っていた子が先にメジャーデビューするのを横目に、アルバイトしながら葛藤する日々でした。でも、“歌手になる”っていう思いはずっと変わらなかったですね。“絶対歌手になる”ってバカみたいにずっと思って疑わなかったんですよね、不思議と(笑)。今もその感覚って変わらなくて、“訴え続けていくんだろうな”っていう思いはずっとあります。

――メジャーでやる意義って何だと思いますか。

みんなで作るってところじゃないでしょうか。制作も宣伝もチームでMs.OOJAというアーティストの曲を広めてくれる。しかもプロフェッショナルな人たちが。同時期にデビューしたアーティストがメジャーからいなくなっているけど、私はメジャーでずっとやり続けていきたいです。いつも危機感を持って臨んでます。

――危機感?

もう8年目なんですけれど、未だにアルバイトのシフトに入る夢を見るんですよ(笑)。潜在意識に、“メジャーデビューする前の環境にいつ戻るか……”って危機感があるんじゃないかな?

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Ms.OOJA 撮影=鈴木恵

Ms.OOJA 撮影=鈴木恵

――クラブではR&Bを歌っていたそうですが、ルーツミュージックは?

歌謡曲というか、ヒットソングですね。子どものころ母が、荻野目洋子さん、小泉今日子さん、アン・ルイスさんなどを車の中で流していたので、一緒に歌っていました。小学生の頃は大黒摩季さんなどのビーイング系。B'z も1stアルバムから聴いています。中学生になってからは、スピッツやL'Arc-en-Cielが好きになって。

――あまり一貫性がないですね(笑)。

そうなんです(笑)。スピッツも聴くけどTKサウンドや宇多田ヒカルさんも聴くし、その時流行ってるものをとにかく聴いてました。洋楽はぜんぜん聴いてなかったんです。

――なぜそこからR&Bに?

なんでだろう? でも、女性がひとりで歌っていて、ちょっと哀愁がある曲が好きだったんですよね……。それって幼少期に聴いていた歌謡曲と通ずるものがあるからなんじゃないかな? ダンスミュージックというよりは、女性のソロシンガーが歌い上げているものが好き。自分がそうなりたいって思っていたからかもしれません。

――まさにお話に出ていたヒット曲のカバーアルバムも作られていますが、それって幼少期の影響なんですね。
 
本当にJ-POPが大好きで、ずっと聴いていたっていうのはありますね。

――特に影響を受けた曲は何ですか。

去年『Ms.OOJAの、いちばん泣けるドリカム』というカバーアルバムを作らせていただいたDREMS COME TRUEもそうだし、宇多田ヒカルさんの「First Love」とかかな……。カラオケで友だちに褒められて、それまで何の取り柄もない自分に自慢できるものができた。やっと“これだ!”って気付かせてくれた楽曲たちです。

――その『Ms.OOJAの、いちばん泣けるドリカム』を出されて歌に対する考えが変わったということですが。

変わりましたね。すごいことをさせていただいたと思って、プレッシャーもありました。でもあのヒット曲をあれだけカバーできたことで、ドリカムというアーティストの曲作りや作詞のやり方を体を通して改めて感じることができたのは、すごく大きかった。“だからドリカムってすごいんだ!”ってイヤというほど感じさせられました。

――具体的にいうと?

吉田美和さんというボーカリストは、脅威です。だからこそ、追いつこうと思って頑張る。“同じ人間なんだから”って思いながら(笑)。カバーしたことによって、ドリカムのDNAが間違いなく私の中に刻み込まれた。歌い方とか表現の仕方は、あの曲たちをカバーすることでだいぶ成長できたんじゃないかな。ちょっと近付けた気がしています。

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Ms.OOJA 撮影=鈴木恵

Ms.OOJA 撮影=鈴木恵

――そして2月7日に、6枚目となるオリジナルアルバム『PROUD』がリリースされました。『PROUD』というタイトルには、どんな想いが込められているのでしょうか。

まさにさっき話したデビューまでの経緯や、デビューしてからの7年間に対する想いです。ひとりじゃないってことが、私の誇り。私の歌を聴いてくれる人たち、そして私の歌を広めてくれるスタッフのみんなを大切に思う気持ちもPROUDだし、その人たちが私や私の歌を大切に思ってくれる気持ちもPROUD。そういうことに気付いた8年目ってことが大きいです。オリジナルアルバムには、ずっと5文字のタイトルを付けてきたんですけれど、今回は『PROUD』がしっくりきた感じ。今年なら、このタイトルを付けてもいいかなって思えました。

――何曲かについてお話をうかがいたいと思います。私は個人的に、「Be myself」が好きなんです。女性にはすごく共感できる歌だなーって思って。

一番本音が出ている曲ですね。だいぶ極端なことを言ってますけど(笑)。

――今は“インスタ映えする日々を送らないといけない”みたいなプレッシャーがありますよね(笑)。

他人と比較しやすい世の中なんじゃないかな? 本当の個性って、人と向き合うことで生まれるじゃないですか。その対象が、今の時代はあまりにも多い気がします。私もずっとスマホでインスタを見ちゃう(笑)。

――キラキラしてますよね、みんな。

そうそう、みんな楽しそうに美味しいものを食べてるのに、私は家で味のない鍋を食べてて、自分が“かわいそう!”って思ったり(笑)。でもそれって、自分がどう思うかじゃなくて人と比べてどう見えてるかってことじゃないですか。輝いてる瞬間、そうじゃない瞬間の明暗がすごく大きくなってる気がします。それって生き辛いですよね。ただ普通に過ごしている日があるから特別な日が輝くんじゃないかって歌うことで、“いいんだ”って思ってもらえるとうれしいな。

――「Be myself」を聴くと、安心できます。

それは嬉しい(笑)。人間はひとつじゃなくて、いろんな顔を持って、いろんな自分がある。昨日と今日の自分は全然違うし、同じ自分はいない。言ってることもどんどん変わるし、それでいいと思うんです。“こうじゃなきゃダメ!”っていうのはない。「Be myself」では、それを言いたかったんです。 

――迷いに迷っている30代女子に聴いてほしい! 自分が通っているから書けるし、歌えるんだろなって思います。

そうですね。同世代の今だから書ける曲だと思います。“今書ける曲”っていうのを今回のアルバムでは大事にしていて。歌い手としては、客観的に物語を伝える歌はフィクションでいいと思っているんだけど、8年間やってきて、私の言葉で私がどう思っているかを歌うことが大切だって教えてもらった気がします。“こういうことを言うのは、私には合わないんじゃないか”って自分で思った曲でも、リスナーは受け入れてくれる。“もっとみんなを信じていいんだ”っていうことに気付いたというか。だから今回のアルバムには、自分の本音が強く出ていると思います。

――個人的に気に入っている曲って?

「PROUD」は最後に作ったんですけれど、タイトル曲を作ったのって初めてなんです。自分にとってのPROUDを突き詰めて曲にしようと思った時、“ひとりじゃない”って言葉が出てきた。生きるとか死ぬとか出てくるけど、生きるのが辛いとか、絶望を感じる時って誰にでもあるじゃないですか。私自身も、昔より不安を感じたり落ち込むことが多くなりました。40代とか50代になると脱するのかもしれないけど、そういうマインドに入っている時期って、辛いっていうことばかり考えちゃう。そんな時、自分が何に救われるかっていうと、人との関り、人との繋がりなんですよ。曲の中でも、そういうことを言っています。

――自分を見つめ直す感じですね。

そうですね。曲調もお母さんのお腹の中や深い海の中にたゆたうようなイメージ。そこで自分を見つめ直すような。

――後輩女子たちに、生きるヒントをいただけるとうれしいです!

ほんのちょっと見方を変えると、物事ってぜんぜん違う姿を見せてくれます。このアルバムが、そういう気付きのヒントになるとうれしいし、そう思いながら作っているので聴いてほしいです!

――そんなOOJAさんの生きる上でのポリシーって何でしょう。

“無理しない”ってことですね。自分が諦めなければ、夢はかなうと思っています。自分と合わないものってあるじゃないですか。歌うってことは、私にすごく合っているけど、“今、無理してるな”とか、“やりたくないことしてるな”って時はあまり良い事が起きないんです。自分に合う物を見分けていくことが大事だと思います。

――音楽以外に興味を持ってることはありますか?

ネコ! 今2匹飼っているんですけど、好きすぎてヤバい(笑)。人間と一緒に住めなくなってるレベルです。趣味もないし、インドア派なので、家で熱燗をつけて、猫をゴロゴロしながら美味しい梅干しで一杯やるのが至福ですね。最近、ちょっと興味があるのが鰹節削り器くらいかな(笑)。家の中を充実させることばっかり考えています。それで<ひとりじゃない>って歌ってるっていう(笑)。だからこそ仕事をしたりライブをしたりするときに、人との繋がりを感じるんです。仕事が一番好きなんですよ、楽しくてしょうがない。そこでやっと人と関われるので(笑)。

――アルバム『PROUD』リリースの後はツアーもありますけれど、2018年をどんな年にしたいですか?

今はとにかく、アルバムリリースとツアーのことしか考えてないんですけれど、今年はオリジナルをいっぱいお届けできる1年にしたいなと思っていています。目標は……、年末に音楽番組がたくさんあるじゃないですか。そこに出られる自分になるっていることですね。この目標を年始に掲げて、関係者に熱いLINEを送りました(笑)。年末には、テレビの顔になりたいです。


取材・文=坂本ゆかり 撮影=鈴木恵


 

 

 


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